2021年12月号(中3)~塗布薬(塗り薬)の正しい塗り方~ポイントは3つ(清潔、塗り方、塗る量)!
※解説やもっと知ってほしいことなどは、おくすりナビの下に書いてあります。
解説やもっと知ってほしいことなど
塗布薬(塗り薬)の正しい塗り方
塗るタイミングは、お風呂上がりが最もよいとされています。
お風呂上がりは「塗る部位」や「塗る指」が清潔で、また皮ふが少し湿っているため塗布薬を塗るときに伸ばしやすいからです。
1日1回だけ塗る場合はお風呂上がりに、1日に2回以上塗る場合は、そのうちの1回はお風呂上がりにしましょう。
【軟膏剤】 (特徴:皮ふへの刺激が少ない、傷口にも塗ることができる、ベタベタして不快に感じることが多い)
<清潔>
「塗る部位」や「塗る指」が汗でベタベタしていたり汚れている場合は、汗や汚れを清潔な濡れたタオルで拭き取ったり、水やぬるま湯で洗い流し、清潔にしてから塗りましょう。
水やぬるま湯で洗い流した後、濡れたままの状態で塗ることは避けてください。
<塗り方>
やさしく伸ばすように塗ります。
この塗り方を塗布(とふ)と言います。
特に炎症を起こしている皮ふは表面がデコボコしていて傷つきやすいため、ゴシゴシこすらないようにしましょう。
塗る範囲が狭い場合は指の腹を使って塗ります。広い場合は手のひらを使って塗ってもよいでしょう。
塗った後、指や手のひらに残った塗布薬は石けんを使って洗い流してください。
<塗る量>
塗った後、塗った部位がペタペタする状態(光を当てたらテカテカしている状態)が適量です。
塗り薬は多く塗っても、効果は適量を塗った場合とほとんど変わりません。
また薄く塗ったら、効果はほとんど得られません。
広範囲に塗る場合、塗る量の目安としてFTU(finger tip unit:塗布量の単位)があります。
軟膏がチューブ容器に入っている場合、人差し指の先から第1関節までの長さだけチューブから出した量(約0.5 g)が1FTUです。
1FTUで指を閉じた状態の手のひら2枚分に相当する面積を塗ることができます。
そのため0.5FTUでは、塗れる面積は指を閉じた状態の手のひら1枚分ということになります。
塗る面積に合わせて、0.2FTUにしたり0.5FTUにするなど調節してください。
円柱状のプラスチック容器(「軟膏つぼ」と言います)に軟膏が入っている場合、FTUで考えながら、必要な量の軟膏を清潔な指で容器からすくい取り、塗ってください。
【クリーム剤】 (特徴:ベタベタ感が少ない、塗りやすい、軟膏剤よりは刺激がある、傷口には塗れない)
<清潔>
軟膏剤の場合と同じです。
<塗り方>
軟膏剤の場合と同じです。
<塗る量>
クリーム剤は軟膏剤に比べて油分が少ないため、適量を塗っても、塗った部位がペタペタする状態(光を当てたらテカテカしている状態)にほとんどなりません。
しかし塗る面積に対して塗る量は軟膏剤と同じであるため、塗る量はFTUで考えてください。
【ゲル剤】 (特徴:ベタベタ感がほとんどない、塗りやすい、クリーム剤より刺激がある、傷口には塗れない)
<清潔>
軟膏剤の場合と同じです。
<塗り方>
患部にすり込むように塗る塗擦(とさつ)という方法で塗るのがよいとされています。
筋肉痛に使用する痛み止めの塗布薬の多くはゲル剤です。
塗擦により成分が体内に吸収されやすくなり、より高い効果が期待できます。
ただし、あまり強くすり込むと皮ふにダメージを与えてしまうため、すり込むというよりはマッサージするように塗るとよいでしょう。
<塗る量>
ゲル剤は油分を含んでいない、あるいは含んでいてもわずかなため、適量を塗っても、塗った部位がペタペタする状態(光を当てたらテカテカしている状態)になりません。
しかし塗る面積に対して塗る量は軟膏剤と同じであるため、塗る量はFTUで考えてください。
【ローション剤】 (特徴:伸びがよい、液だれして塗りにくいときがある、クリーム剤より刺激がある、傷口には塗れない)
<清潔>
軟膏剤の場合と同じです。
<塗り方>
スキンケア目的の保湿剤の場合、ゲル剤と同じように塗擦がよいとされています。
一方、頭皮に用いる塗り薬では、ローション剤を頭皮に直接付けた後、指の腹を頭皮に当てて押すようにしてなじませます。
<塗る量>
スキンケア目的の保湿剤の場合、広げた状態の手のひらに1円玉と同じ面積の量を出すと、軟膏剤の1FTUと同じように指を閉じた状態の手のひら2枚分に相当する面積を塗ることができます。
頭皮に用いる塗り薬では、指の腹にローション剤2~3滴分を乗せた後、それを髪の毛をかき分けて頭皮に直接付けます。
塗る範囲が広い場合は、指の腹に乗せて頭皮に付けることを繰り返してください。
塗る順番
軟膏剤やクリーム剤などを複数塗る場合、医師や薬剤師から塗る順番について指示があれば、それにしたがってください。
指示がなかった場合は、塗る面積の広い方を先に塗ります。
ステロイド塗布薬と保湿剤を一緒に使う場合は、塗る面積の広い保湿剤を先に塗り、次にステロイド塗布薬は患部だけに塗ります。
体の部位によって成分の吸収量が違う
塗り薬を腕に塗った時の吸収量を1とした場合、頭皮やわき(脇の下)では3.5倍、首の前側では6倍、頬(ほお)では13倍、陰部では42倍になります。
一方、手のひらでは0.83倍、足底では0.14倍になります。
塗り薬の成分がどれくらい皮ふに吸収されるかは、皮ふの厚さの影響を受けるのです。
ステロイドの強さ(5段階) と 代表的な成分名
<ストロンゲスト(最も強い)>
クロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾン酢酸エステル
<ベリーストロング(とても強い)>
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル、ジフルプレドナート、フルオシノニド、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ジフルコルトロン吉草酸エステル など
<ストロング(強い)>
ベタメタゾン吉草酸エステル、デキサメタゾン吉草酸エステル、デキサメタゾンプロピオン酸エステル、フルオシノロンアセトニド など
<ミディアム(普通)>
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、クロベタゾン酪酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、アルクロメタゾンプロピオン酸エステル など
<ウィーク(弱い)>
プレドニゾロン
ステロイド塗布薬を成分がよく吸収される頬や陰部などに塗る場合は、ミディアム(普通)やウィーク(弱い)を選択します。
しかし塗る部位だけでなく症状の程度も考えて強さを変えるため、薬局やドラッグストアでステロイド塗布薬を購入する場合は薬剤師や登録販売者に相談してください。
参考:日本皮膚科学会HP 皮膚科Q&A、シオノギヘルスケアHP ヒフシルワカル、第一三共ヘルスケアHP、慶應義塾大学病院HP