2024年11月号(高1)子宮頸がんワクチンについて知ろう!
※解説やもっと知ってほしいことなどは、ドラッグレターの下に書いてあります。
解説やもっと知ってほしいことなど
HPVと子宮頸がんの関係
HPV(ヒトパピローマウイルス)は一般に性行為を介して感染することが知られており、女性の多くが一生に一度は感染するといわれています。
子宮頸がんのほとんどがHPVの感染で生じることが分かっています。
子宮頸がんは40歳未満の女性で2番目に多いがんです。(HPVは膣がん、外陰がん、肛門がんなどの発生にも関わっています)
HPVに感染したら100%の確率で子宮頸がんになるわけではありません。
HPVに感染しても約90%の確率で、2年以内にウイルスは自然に排除されます。
しかし、ウイルスが自然に排除されずに数年から数十年にわたって感染し続けた場合、がんになることがあります。
困ったことにHPVに感染しても、また子宮頸がんの初期でも自覚症状がないため、自分では気づけません。
子宮頸がんが進行して不正出血(生理以外の出血)や性行為の際の出血などが現れてから、ようやく気づくことができるのです。
そのためHPVに感染しないようワクチンを接種したり、またワクチンを接種しても、接種しなくても、20歳を過ぎたら2年に1回、子宮頸がん検診を受けることが推奨されています。
日本で承認されている子宮頸がんを予防するためのHPVワクチン
(2024年8月時点)
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ワクチン名
[製造販売] |
サーバリックス (2 価HPVワクチン) [グラクソ・スミスクライン] |
ガーダシル (4 価HPVワクチン) [MSD] |
シルガード9 (9 価HPVワクチン) [MSD] |
|
ワクチンのタイプ | 不活化ワクチン※1 | 不活化ワクチン※1 | 不活化ワクチン※1 | |
対象年齢 | 10 歳以上 | 9 歳以上 | 9 歳以上 | |
接種回数 (接種間隔) |
3 回 (0、1、6 ヶ月間隔) |
3 回 (0、2、6 カ月間隔) |
3 回※2 (0、2、6 カ月間隔) |
|
発症予防効果 | 50 ~ 70%※3 | 50 ~ 70%※4 | 80 ~ 90%※5 | |
副 反 応 |
軽いもの (10%以上の確率) |
・注射したところの痛み、赤み、腫れ ・関節痛 ・頭痛 ・だるさ など |
・注射したところの痛み、赤み、腫れ | ・注射したところの痛み、赤み、腫れ |
軽いもの (1~10%の確率) |
・じんましん ・めまい ・発熱 など |
・注射したところのかゆみ、不快感 ・頭痛 ・発熱 など |
・注射したところのかゆみ、出血
・頭痛 ・発熱 など |
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軽いもの (1 %未満の確率) |
・注射したところの知覚異常 ・しびれ感 ・全身の脱力 |
・手足の痛み ・腹痛 など |
・手足の痛み
・腹痛 など |
|
重いもの (頻度不明) |
・ショック、アナフィラキシー ・ギラン・バレー症候群 ・急性散在性脳脊髄炎(ADEM) |
・アナフィラキシー ・気管支けいれん ・ギラン・バレー症候群 ・急性散在性脳脊髄炎(ADEM)など |
・アナフィラキシー ・気管支けいれん ・ギラン・バレー症候群 ・急性散在性脳脊髄炎(ADEM)など |
※1 感染力をなくした病原体や、病原体を構成するタンパク質からできています。
1回接種しただけでは必要な免疫を獲得・維持できないため、一般に複数回の接種が必要です。
(厚生労働省 サイト内検索結果)
※2 初回接種を15歳未満で受けた場合は、初回接種から6~12カ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができます。
※3 子宮頸がんを最も起こしやすい型であるHPV 16型と18型の感染を防ぐことができるため、子宮頸がんの原因の50~70%を防ぐことができます。
※4 HPV 16型と18型に加え、6型と11型の感染を防ぐことができ、子宮頸がんの原因の50~70%を防ぐことができます。
※5 HPV 6型、11型、16型、18型に加え、ほかの5種類(31型、33型、45型、52型、58型)の感染を防ぐことができ、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぐことができます。
参考:
サーバリックス®、ガーダシル®、シルガード®9 の各添付文書(一部改変)
HPVワクチンについて知ってください~あなたと関係のある“がん”があります~(2023年3月改訂版、厚生労働省)
HPVワクチンの接種を逃した方に接種の機会をご提供します(2023年3月改訂版、厚生労働省)
HPVワクチンに関するQ&A
(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_qa.html)
公費(無料)で接種できる期間と、それを逃した場合
小学校6年~高校1年相当の女性は、予防接種法に基づく定期接種として公費によりHPVワクチンの接種を受けることができます。
もし接種機会を逃してしまっても、以下に該当すれば公費で接種を受けることができます。
・平成9年度~平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)(※6)
・過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない(※7)
※6
令和5年4月からは、平成18年度生まれ(誕生日が2006年4月2日~2007年4月1日)の女性もキャッチアップ接種(日本国が積極的に接種を推奨していなかったことで接種機会を逃した方を対象に行う接種のこと)の対象になりました。
また、平成19年度生まれ(誕生日が2007年4月2日~2008年4月1日)の方も、通常の接種対象の年齢(小学校6年から高校1年相当)を超えても、2025年3月末まで接種できます。
※7
過去に接種したワクチンの情報(ワクチンの種類や接種時期)については、母子健康手帳や予防接種済証等で確認してください。
(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_catch-up-vaccination.html)
男性のHPVワクチン接種について
男性もHPVに感染します。男性がHPVワクチンを接種することのメリットとして、パートナーにHPVウイルスを移すことを防ぐことができるだけでなく、男性がHPVに感染することで引き起こされる肛門がんや陰茎がん、また性感染症の尖圭コンジローマを予防できることが挙げられます。
副作用と副反応の違い
「副作用」と似た言葉に「副反応」があります。
副作用とは医薬品の使用において「体にぶつぶつができたり、眠くなったりする、医薬品本来の目的以外の好ましくない働き」のことです。
一方、副反応とはワクチン接種において「ワクチン接種後に発熱や接種部位の痛みや腫れなどが起こる、体に免疫を付与する以外の反応」のことです。
副作用も副反応も、目的としていない好ましくない働きという意味では同じですが、医薬品では目的の作用ではない作用ということで「副作用」、ワクチンでは目的とする体の反応(免疫)を促しますが、それ以外の反応ということで「副反応」というように呼び分けています。
<HPVワクチン接種による副反応>
2013年4月より日本国内でHPVワクチンの定期接種が始まりましたが、接種による可能性のある重い副反応(重大な健康被害)が複数報告されたため、国はHPVワクチンの接種を積極的推奨差し控えとしました。
その後、専門家の会議でたくさん議論がなされ、HPVワクチンの安全性について特に気をつけることはないことを確認、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ることが認められたことから、2021年11月に開かれた国の会議において積極的推奨が再開されることが決まりました。
予防接種健康被害救済制度
『 予防接種後健康被害救済制度 』と表示されることもあります。
ワクチン接種による副反応で、比較的起こりやすいものとして接種部位の痛みや腫れ、一時的な発熱などがありますが、まれに起こるものとしてアナフィラキシーや血栓症など重い副反応があります。
重い副反応により重大な健康被害(病院で治療した、障害が残った、死亡した)が生じることがあり、その救済として予防接種健康被害救済制度が設けられています。
生じた重大な健康被害がワクチン接種を受けたことによるものと厚生労働大臣が認定したときは、予防接種健康被害救済制度により、医療費や障害年金等の給付などが受けられます。
重大な健康被害が生じた場合は、接種を受けたときに住民票を登録していた市町村に相談してください。
(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_kenkouhigaikyuusai.html)
参考:
国立がん研究センター「2019年度がん種別統計情報」、日本プライマリ・ケア連合学会HP、
厚生労働省HP、HPVワクチンについて知ってください~あなたと関係のある“がん”があります~(2024年2月改訂版、厚生労働省)、
HPVワクチンの接種を逃した方に接種の機会をご提供します(2024年2月改訂版、厚生労働省)