2020年6月号(高3)汗と上手につき合おう!
※解説やもっと知ってほしいことなどは、ドラッグレターの下に書いてあります。
解説やもっと知ってほしいことなど
★多汗症の情報は下の方にあります★
汗をかかないようにしていると、汗をかく能力が低下します
汗をかくことは自然なことで、恥ずかしいことではありません。
汗の一番大きな役割は体温調節。その他に保湿、殺菌、アレルギーの原因物質の侵入阻止などの役割があります。
汗をかいた実感がなくても、主にエクリン腺から1日約1 Lの汗が出ています。真夏やスポーツ時などでは1日約3 Lの汗が出ています。
汗の原料は血液で、汗腺で塩分・ミネラルなどが再吸収され、結果的に水分の多い汗(99%が水分)が出てきます。
汗腺がしっかり働いていると、塩分・ミネラルなどがちゃんと再吸収され、サラサラ汗が出てきます。サラサラ汗なので体が直ぐに冷え、熱中症予防につながります。汗をよくかく人ほど、汗腺での再吸収能力が高くなっていきます。
(大汗をかいた後にベタベタするのは、汗腺での再吸収能力が高かったとしても、それを上回る発汗量のため、塩分・ミネラルなどが十分に再吸収されずに皮ふ表面に出てきてしまうためです)
汗腺がしっかり働いていないと、必要な時に汗が十分に出ない、出ても再吸収能力が低いので塩分・ミネラルなどが多く混ざったベタベタ汗が出てきます。ベタベタ汗は乾きにくいため体が直ぐに冷えず、また塩分・ミネラルなどが体から失われるため、熱中症になりやすくなります。また汗をかいた後のニオイは、サラサラ汗よりも強くなります。
このような理由から、『汗をちゃんとかき、その後のケアをしっかり行う』ことを基本とするのが良いのです。
ベタベタ汗はイヤ、汗をかいた後のニオイが気になるなどの理由から、汗を出にくくする成分が入った制汗剤を体中に使用したくなりますが、お勧めできません。制汗剤はわきなどに限定して使用しましょう。
※ストレス、食べ物(タンパク質や香辛料の摂り過ぎなど)、睡眠不足などによって汗に混ざる成分が変わるため、ニオイが強くなることがあります。
ニオイが気になる方は、普段の生活で見直すところはないか振り返ってみましょう。
汗のケア製品
効き方の違い、また使用方法や使用感に応じて選びましょう。
効き方の違いによって、『 制汗剤 』と『 デオドラント 』の2種類に分けられます。
制汗剤とは、汗を出ないようにする製品
・効果:汗の出口をふさいで、一時的に汗が出ないようにします。
・成分:クロルヒドロキシアルミニウム(アルミニウムクロロハイドレート)、塩化アルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛など
デオドラントとは、ニオイを防いだり取り除いたりする製品(成分は、殺菌成分とニオイ防止成分に分けられます)
・効果:皮ふにいる雑菌を殺したり、ニオイ成分を吸着したりして、ニオイを防ぎます。
・成分:イソプロピルメチルフェノール、β-グリチルレチン酸、銀ゼオライト、塩化ベンザルコニウム(ベンザルコニウム塩化物)、トリクロサン などは殺菌成分 / 酸化亜鉛 などはニオイ防止成分(吸着成分)
使用方法や使用感によって、いくつかのタイプに分けられます。
・パウダースプレータイプ:サラサラ感・クール感があります。
・直接塗布タイプ:ロールオンタイプ、スティックタイプなどがあります。
・ウォータータイプ:適量を手にとって肌に直接塗ります。
・シートタイプ:かいてしまった汗や、肌のベタつきを拭き取るシート。殺菌成分や、制汗成分+殺菌成分の入ったシートもあります。
注意1:
汗ケア製品の使いすぎは、かぶれなどの皮ふトラブルを招くことがあります。汗ケア製品で皮ふがかぶれたり、強いかゆみが生じたら、使用を中止してください。
注意2:
制汗剤やデオドラントで、ニオイを完全に発生させないようにすることはできません。香料の入った製品では香料とニオイが混ざることで、かえって不快なニオイが生じることがあります。また香料も人によっては不快に感じます。無香料の製品がオススメです。
多汗症について
両手のひら、両足の裏、両わきなどの一部に過剰な発汗が見られる病気です。
最初に多汗症状が出るのが25歳以下、多汗が6ヶ月以上続いている、週1回以上の頻度で多汗が見られる、睡眠中には多汗が見られない、多汗により日常生活に支障がある、家族にも多汗の人がいる、などの特徴があります。
甲状腺の病気などに伴って多汗が見られることもあるので、まずは病気によるものか、そうでないかを確認する必要があります。まずは皮ふ科を受診しましょう。必要があれば、皮ふ科の先生が検査のために他病院への紹介状を書いてくれます。
病気が原因ではなく、また市販の制汗剤では対処できない場合、皮ふ科で治療を受けましょう。
治療法はいくつかあり、部位や重症度によって、また効果や副作用も考慮して選びます。
(1)塩化アルミニウム水溶液の外用療法
塗り薬による治療です。塩化アルミニウム水溶液を多汗部分に塗り、汗の出口をふさぎます。皮ふへの刺激があること、半年~数年間塗り続けなければならないのが欠点です。最初に試みられる治療法のひとつです。
(2)イオントフォレシス
手のひらなど水に浸せる部位に適用できる治療です。多汗部分を水に浸して電気を流し、汗の出口を狭くします。最初に試みられる治療法のひとつです。
(3)抗コリン薬の内服療法
飲み薬による治療です。神経に働きかけて、汗が出ないようにします。(1)や(2)で十分な効果がない場合や、多汗の部位が全身に見られる場合に行われます。口が渇く、便秘、目がかすむなどの副作用が出やすいのが欠点です。
(4)ボトックス局所療法
注射による治療です。ボツリヌス毒素を多汗部分に注射して神経に働きかけ、汗が出ないようにします。治療効果は高く、約6ヶ月間持続します。部位によっては保険証が使えず、自費治療になることなどが欠点です。
(5)交感神経遮断術
手術による治療です。胸腔鏡を使った手術で胸部の交感神経を切断、またはクリップなどで遮断し、汗が出ないようにします。交感神経を切断(遮断)したら元に戻せないため、最終手段の治療法。最も効果が高い反面、手術後に多汗でなかった部位に新たに多汗が見られる可能性が高いのが欠点です。この治療を行うかは医師とよく相談する必要があります。
参考:花王株式会社HP、トコトンやさしい化粧品の本 第2版(日刊工業新聞社)、今日の治療指針2017(医学書院)