2024年11月号(高3)ペットボトル症候群に注意して!
※解説やもっと知ってほしいことなどは、ドラッグレターの下に書いてあります。
解説やもっと知ってほしいことなど
ペットボトル症候群になるメカニズム
糖類を多く含む清涼飲料水やスポーツドリンク、エナジードリンクなどを毎日多く飲んでいると、以下の経緯でペットボトル症候群になります。
①血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が上昇する
②喉が渇く
③さらに清涼飲料水などを飲む
④血糖値がさらに上昇する
⑤インスリン(すい臓から分泌され、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込んで血糖値を下げるホルモン)の働きが悪くなり、ブドウ糖を細胞内に取り込めなくなって細胞がエネルギーを得られなくなる
⑥体は脂肪を分解してエネルギーを調達するようになる
⑦脂肪の分解時に生じる酸性物質のケトン体(アセト酢酸、3-ヒドロキシ酪酸、アセトン)が血液中に増えてケトーシスと言う状態になり、吐き気や嘔吐(おうと)、腹痛などの症状が現れてくる
⑧ケトン体がさらに増えてくると血液が酸性に傾いてケトアシドーシスという状態になり、脳などに影響が及び意識障害や昏睡(こんすい)などが見られ、危険な状態になる
⑦がペットボトル症候群、すなわち急性の糖尿病、⑧は悪化して直ちに入院・治療が必要となった状態です。
糖尿病になりやすい人(肥満体型、家族に糖尿病の人がいるなど)は、そうでない人に比べてペットボトル症候群になる可能性が高いため、飲み物の選択には特に注意を払いましょう。
ペットボトル症候群にならないようにするためには、喉が渇いたときなど単なる水分補給では、糖類を含まない水やお茶、麦茶などを飲みましょう。
喉をすっきりさせたい場合は、炭酸水がお勧めです。
やむを得ず清涼飲料水やスポーツドリンクなど糖類を含む飲み物しかない場合は、多く飲んでしまうような飲み方(一気飲みなど)をしないようにしましょう。
1日に摂取しなければならない水分
体重50 kgの成人の場合、1日に排出される(体の外に出て行く)水分量は約2.5 Lです。排出の内訳は、不感蒸泄(吐いた息や皮ふから水分が失われていくこと):0.9 L、汗:0.1 L、尿や便:1.5 Lです。
そのため普通に生活をしていても、1日に排出される水分量と同じ約2.5 Lの水分を飲食物から摂取する(体に取り込む)必要があります。摂取の内訳は、食べ物の水分:1.0 L、食べ物を分解してエネルギーを得る時に作られる水分:0.3 L、飲料水:1.2 Lです。毎日1.2 Lの水分を口から摂取する必要があります!
毎日1.2 Lの水分を口から摂取する必要があるため、何を摂取するか、つまりどのような飲み物を選ぶかが重要になるということです。
ノンカロリー、カロリーオフ、無糖などと表示された飲み物には注意を
ノンカロリー、カロリーオフ、無糖など表記されていたら、普通はカロリーが全くなかったり糖類が全く含まれていないと思いますよね。
しかし、一定量までは糖類を含んでいてもノンカロリーなどと表記できるのです!
・「カロリーゼロ」「ノンカロリー」:100 mLあたり5 kcal未満であれば表記できる
・「ノンシュガー」「シュガーレス」「無糖」:100 mLあたり0.5 g未満であれば表記できる
・「カロリーオフ」「低カロリー」:100 mLあたり20 kcal未満であれば表記できる
・「糖質オフ」:糖類が100 mLあたり2.5 g未満であれば表記できる
例えば、ペットボトル(500 mL)に糖類が12 g含まれていても“糖質オフ”と表記でき、これを全部飲むと角砂糖に換算すれば約3個分を摂取することになるのです。
ノンカロリー、カロリーオフ、無糖など表記されていても大量に飲まないようにしましょう。
参考・引用
・今日の治療指針2023
・千葉県医師会HP「健康トピックス」
・「へるす・りさーち」名古屋市衛生研究所だよりNo. 27
・厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/hyouziseido-5.html)
・環境省「熱中症 環境保健マニュアル2022」